勤務医、開業医、研修医にわけて解説していきます。
2007年11月18日付けの朝日新聞朝刊社説によれば、勤務医の平均年収は約1400万円となっている。その他の調査でも勤務医の平均給与は1100万円~1400万円程度の結果が多く、大手放送局や大手商社の一般職社員とほぼ同額、もしくは若干低くなる。ただし、これは正規雇用の勤務医の賃金である。また、時間外勤務に関しては、労働基準法を大きく逸脱するケースが多いため正確な申告が出されていないと思われ、サービス残業や無給の拘束時間に関しては信頼できるデータはない。
また、いわゆる日雇い契約で雇用される非正規雇用の医師や、大学院生、研究生などの身分で無給労働を強制される医師も多く、正式な勤務医だけの収入から勤務医全体の平均収入は把握できない。また、個々の医師も上記様々な身分を遍歴し、無給労働期間(研究生・大学院生)、薄給-諸手当・ボーナスなし期間(日雇い契約)、マイナス所得期間(海外留学)をそれぞれ何年間も経験するため、正規雇用期間中だけの収入から生涯賃金を計算することは出来ない。
かつては日雇い契約は研修医、もしくは経験の浅い卒後5年以下の医師だけ、などという不文律があったが、現在はそれも崩壊し、都市部でも経験のある医師が年収400~600万円台で日雇い雇用されているケースが増えている。週100時間以上の勤務を強いられる例も多く、時給が1000円以下になるケースも少なくはない。2008年6月25日付けの神戸新聞に、医師不足に困窮した西宮市立中央病院が待遇改善目的で医師の時間外勤務手当を「日額七千六百五十円(五時間以上)から一万八千円」に増額したと報じられ、これによってそれまで同病院の時間外手当が時給1530円以下だったことが暴露された。
さらに、医師は認定医、専門医などの資格を維持するために学会費を支払い、定期的に学会に出席することを必要とされるが、これらの経費は勤務医の場合通常全額自己負担であり、旅費も学会費も通常経費として認められない。
2007年11月18日付けの朝日新聞朝刊社説によると開業医の平均年収は2500万円であると報告された。中央社会保険医療協議会が医療従事者・医療施設の経営実態を調べる「医療経済実態調査」(05年6月時点)では、個人開業医の収支差額は2744万円だとした。しかし、この計算には社会保険料や税金、設備投資借入金の返済などの出費が含まれておらず、日本医師会によると、年収平均1,070万円であり、同規模の中小企業の経営者等とほぼ同額であると示した。また勤務医の平均とされる1100~1400万円より低かった。さらに、大手放送局、大手商社の一般職サラリーマンより年俸が300~500万円程度低く、退職金も出ないため、同レベルの学歴を持つ他の職種と比較して生涯賃金が低いと考えられる。
また、厚生労働省発表の「介護保険事業に係る収入のない医療機関の集計(A集計)」(2005年)でみると、一般診療所の「収支差の分布」は、平均値を中央とする正規分布ではなく、平均値以下にピークのある偏った分布をしており、平均収支差の200万円以下の診療所が約65%を占めている。また、収支差の段階で赤字の診療所が13%を占めている。
かつて薄給で「奴隷のようだ」と形容され、労働基準法における最低賃金を下回る状態でもあった研修医の待遇は、近年「生活費稼ぎの徹夜のアルバイトの連続など医療事故の温床である」との観点から、2004年度からは月収30万円程度(特別手当無し)を支給するように国からの勧告がおりた。しかし、必ずしも守られていないという指摘がある。研修医はその研修コース次第で週60時間から100時間病院に拘束されるため、月収30万円でも時給750円から1250円になる。
日本には、医師の定年制や免許の更新制度は無い。68歳定年制のドイツ等また、70歳以上の高齢、又は運転能力に問題がある人の自動車運転を危険であると制限する運転免許更新テストと比べても、患者の命を預かり、運転手よりも大きな責任を持つと言われる医師の免許が能力、年齢と関係なく生涯持つことができるのは問題であるという意見もある。
一方、日本では病院長は医師でなければならないなど、各種役職に医師の資格を要求する法規制があり、実際に診療を行っていない役職の者でも医師の資格を要する場合がある。一律に医師免許そのものに定年制を設けた場合、優秀な病院経営者を排除してしまう結果になりかねない。また、医師免許を取得して中央官庁の官僚となったいわゆる医系技官が病院などに天下りする際も、医師定年制は障害になる可能性がある。
日本労働組合総連合会(連合)は保健医療に携わる保険医に定年制を設けることを推奨している。しかし、その場合、定年年齢を過ぎてしまった医師の診察を受けると全額自己負担になるというデメリットもある。老練な医師の診察を希望する患者に過大な負担をかける可能性もある。
因みに精力的に全国行脚を続けている日野原重明は 1911年生まれであり、その講演の中で「アメリカの大学教授選考では、最近は年齢は不問です。つまり、業績、仕事をやる人は、年齢に関係なく教授を続けられるようになった。それに引き替え日本では、大学に定年制が引かれ、アメリカとは逆ですよ。」と発言したと言うエピソードもある(但しこれは日野原個人がアメリカの医師の年齢制度について触れた件であることに注意。ドイツにおいては別の価値観において規定を定めているので、日野原個人の発言を以って判断すべきではない)。
とくに近年の医療技術の発展により、医療知識は日々更新されており、最新の知識を持たない高齢の医師では不十分という意見もある。高齢の医師が必ずしも臨床業務に携わっていないことや、非臨床業務である管理職にも医師の資格が義務づけられている点は今後の課題である。
IT関連技術の進歩に伴いパソコンが急速に普及し、各医療機関ではレセコン(レセプトコンピュータ)だけでなく電子カルテも次第に普及しつつある。しかし、患者の重大な個人情報を取り扱うレセプト及びカルテであるだけに、個人情報漏洩事件が頻発する現在、周辺整備をなおざりにしたまま拙速にITを本格導入すれば、医療現場は混乱するのみならず、日本の医療が崩壊するとの指摘さえある。
本来、診療を行う為に掛かるコストを支払う診療報酬にIT関連機器(レセコンや電子カルテ等)導入の為の費用は全く考慮されず、その全てを医療機関側が負担してきた。2005年、国は医療制度改革大綱にレセプトのオンライン化の義務化を盛り込んだが、2006年度の診療報酬改定でも初診料の電子化加算(3点、30円に相当)を新設したのみで、約650億円と試算される財源については全く触れていない。誰でもインターネットを通じて様々な医学情報を容易に得られるようになり、ことに先端医療や新興感染症など最新の情報については、場合によっては医師と患者の知識の逆転現象さえ珍しくなくなった。
従来、医師会等を通じてのみ情報を得ていた全国各地の医師同士も、各種掲示板、メーリングリストを通じて横断的に双方向性に情報・意見交換できるようになった。学会等ではなかなか得られない臨床現場で役立つ医学・医療の経験・知識が、全国的に共有される意義は大きい。
1999年冬のインフルエンザ流行時、実地医療研究MLという医療系MLを通じてアマンタジンの有効性が初めて全国的に注目され、その後、迅速診断法や抗インフルエンザ薬などの情報も、医学会や医師会に先んじて様々な医療系MLに流れ、全国各地の医師同士の実体験が共有された。これを学問的に将来性のあるものに取りまとめたものとして、日本臨床内科医会のインフルエンザ全国調査研究:FLU・STUDY/JPAが注目された。
治療だけではなく医療訴訟・待遇等についても話し合われることも多く、署名活動を行ったり、あまりにリスクが高い病院から医師が転職するきっかけにもなっている。
日本医師会はこうした流れを察知して、インターネット生涯教育講座、医療安全推進者養成講座などをスタートした。様々な医学会からも講演会の映像配信や、ガイドラインのネット上公開などが行われている。